ゲームデザインバイブルを教科書に使うには?序章
備忘録を兼ねて、とりいそぎメモ
イマイチわかっていない
『ゲームデザインバイブル 第2版 ―おもしろさを飛躍的に向上させる113の「レンズ」』
ゲームデザインバイブルを教育カリキュラムに組み込む方法がイマイチわかっていない
— テトラポッド葉山 (@my_syumi_game) 2021年8月12日
東京国際工科専門職大学の授業で使っているらしいので、聴講してみたいhttps://t.co/SorAUQBizi
個人的にはイマイチわかっていないのである。
内容がわりと散逸している印象で、連続した講義とかに使う教科書としてはまとまりが悪いのでは?という感想。
内容はいいが、講義用に資料の再構成が必要そうな気はしている。
IGDA山根さんの見解や実例
一方で、IGDAの山根先生は本書を「ゲームデザイン大学教科書の到来」としている。
本教科書を採用するメリット
著者はこの教科書を大学の授業に使ってきた.初版を使った2014年の授業報告はCEDEC2015でも発表した他、第2版にもとづくシラバス(1学期分の授業計画)も公開している.その経験を踏まえて、本教科書をゲームデザイン科目に採用すると以下のメリットがあると考えている.
- 人生のアドバイスまで含んだ稀有な教科書.ゲームデザインは学ぶ価値がある学問である.それは職業ではなく、人生の様々な場面で使える.
- アナログゲームやデジタルゲームに限定されず、あらゆるゲーム共通するゲームデザインの原理や基本要素を学べる.いま売れているゲームを模倣する教育には役に立たないが、これから新しいゲームをつくりたい人の育成には最適.
- 英語だけでなく独仏葡韓中の多言語に翻訳されており,将来に国際的な業務に参加する際の共通言語としても使える
- 入門書になるだけでなく、参考文献も示し、それらを読めばさらに詳しい議論を追える.
つまりこのは教科書は学生だけでなく研究者にとっても深い考察を与える手引きになる.たとえば文化庁事業『ゲーム研究の手引き』では「優れたゲームデザイン理論書はゲーム研究者にとっても非常に重要な文献」の一冊として本書が紹介されている. (くわしくは筆者が受講生用に書いた教科書案内を参照.)
実際、東京国際工科専門職大学における山根先生の授業で教科書として使用されている
第1回 ゲームデザインとゲームデザイナ
ゲーム開発者の職種と、どの職種でもゲームデザインに関与することを学ぶ。ゲームデザインによってつくられるユーザ体験(ユーザエクスペリエンス)を説明できるようになる。
第2回 ゲームの要素
ゲームをプレイしながら分析することの難しさを理解し、どうすれば遊びを分析できるかを説明できる。ゲームを要素に分解して説明することができる。
第3回 ゲームのテーマ
ゲームの各要素を使って、ゲームのテーマをどうやって補強するのかを理解し、過去の名作を各要素とテーマから説明できる。
第4回 ゲームとプレイ、プレイヤー、プレイヤー心理
ゲームの定義の難しさとゲームプレイについて理解する。幅広いプレイヤーを分類するための手法として、消費者区分(マーケットセグメンツ)や快楽の分類、プレイヤー分類、ローカライズとカルチャライズについて理解する。プレイヤーのメンタルモデルとして、チクセントミハイのフロー理論、マズローの人間の欲求の5段階説、デシとライアンの自己決定理論、内発的動機付け、リーヴの自律的自己調整、コーンの報酬主義批判について学ぶ。
第5回 ゲームメカニクス
ゲーム独自の要素であるゲームメカニクスについて、大まかな分類を学び、特にブレイクスルーを起こしたゲームメカニクスとして、ゲームの仕組みを連続空間でも離散空間でも説明できること、オブジェクトの状態遷移で説明できることについてゲームの古典を使いながら学ぶ。
第6回 ゲームメカニクス(続)
近年のゲームメカニクスの傾向として、ユーザがルールを作ること、確率と期待値について学ぶ。
第7回 ゲームバランス
ゲームメカニクスを知っているだけではゲームデザインはできない。バランス調整が必要だが、ゲームバランスはいろいろな意味で使われてきた。そこでゲームバランスの類型と、代表的なゲームバランシングの方法論について学ぶ。
第8回 ストーリーとナラティブ、ゲーム世界
ゲームにおけるストーリーの作り方について学ぶ。また、ゲーム世界が他のメディアとつながることをトランスメディア理論を使って学ぶ。
第9回 ゲームキャラクターとゲーム空間
ゲーム世界をデザインするために、ゲームキャラクターをデザインする方法と、ゲーム空間をデザインする方法について学ぶ。多様なキャラクターをつくる方法、ゲーム空間を構造化する方法について学び、ゲーム空間の魅力を損ねる要素を取り除く方法についても学ぶ。
第10回 美学・アートワーク
強力なゲームの世界には「雰囲気」がある。それはビジュアル・サウンド・楽曲・ゲームメカニクスがすべて機能してつくりだされる。それを作り出し開発チームで共有するために必要なプロトタイピングについて学ぶ。また、アートとテクノロジーのバランスにおいて重要なテクニカルアーティストの役割について学ぶ。
第11回 コミュニティ・チーム開発・ドキュメンテーション
ゲーマーが自分以外のプレイヤーと関わるコミュニティデザインを学ぶ。チーム開発で起こる問題とゲームデザインが果たす役割について述べる。ゲーム開発におけるドキュメンテーションの重要性について理解する。
第12回 プレイテスト
デバッグとプレイテストの違いについて説明できる。
第13回 テクノロジー、収益モデル
なぜゲームデザインにテクノロジーを学ぶ必要があるのかを理解し、これまでゲーム産業に起こったハイプサイクル、イノベーションのジレンマについて説明できる。収益のために重要なビジネスモデルについて理解する。
第14回 クライアントへのプレゼン
これからつくるゲームをクライアントに説明するにはクライアント分析が必要である。また、資金調達(ファンディング)に成功したプレゼンテーション事例について学ぶ。
第15回 社会の中のゲームデザイン
ゲームはプレイヤーに影響を与え、社会を変える力がある。社会を変えるゲームの力や、ゲームデザインの社会的責任、CEROに代表されるゲーム産業の自主規制について理解する。
第1回 ユーザエクスペリエンス
ゲームをプレイしながら分析することは難しい。その方法について学ぶ。
第2回 ゲームの要素分析演習
「ゲームの要素」にもとづいてゲームを分析する。
第3回 ナラティブ分析
ゲームの面白さを伝える方法として、ナラティブ分析について学ぶ。
第4回 ナラティブ分析レビュー
他の人が書いたナラティブ分析を批判的に紹介する。
第5回 ゲーム開発手法
なぜゲーム開発はシステム開発の中でも特に難しいのかをユーザエクスペリエンスの観点から学ぶ。
第6回 ユーザの間接的コントロール
ユーザを導く方法について学ぶ。
第7回 パズルデザイン
ゲームの古典的なジャンルであるパズルゲームについて学び、よいパズルをつくるパズルデザインについて理解する。
第8回 パズルデザイン演習
パズルゲームを用いたゲームデザイン演習を行う。
第9回 MDAフレームワーク
ユーザエクスペリエンスにフォーカスする手法の一つとして、MDAフレームワークについて学ぶ。
第10回 MDAフレームワーク演習
MDAフレームワークを使ったゲームデザイン演習を行う。
第11回 チーム開発とドキュメンテーション
チーム開発の上で重要なコミュニケーション支援ツールについて講義と演習を行う。
ゲームデザインドキュメントの目的について講義する。
第12回 ゲームデザイン演習・ドキュメンテーション
ドキュメンテーションを用いたチームでのゲームデザイン演習を行う。
第13回 ゲームデザイン演習・タスク管理
MDAフレームワークを実際のタスクに分解するゲームデザイン演習を行う。
第14回 ゲームデザイン演習・テストプレイ
テストプレイを用いたゲームデザイン演習を行う。
第15回 ゲームデザイン演習・まとめ
IGDA小野さんの見解や実例
IGDAの小野さんの記述も見つかった
もっとも、それだけにそれぞれのレンズの内容は散漫で、とっちらかっており、何が言いたいのかわかりにくい部分があることも否めない。レンズ同士で内容が重複していたり、時として矛盾していたりするように感じられるものもある。かと思えば、複数のレンズが互いに関連し合っているため、章を前後しながら読み進めなければ、十分に理解できない部分もある。学術論文のようなエレガントさとは、およそかけ離れた代物だ。
もっとも、これは確信犯的な行為であるようにも感じられる。このことは、前書きで「『ゲームデザインの統一理論』のようなものは存在しません。(中略)そして、ゲーム業界にメンデレーエフ(註4)が現れない可能性も、受け入れておく必要があります」と記されていることからもわかる。実際、本書を読んでも、ゲームデザインの奥義は手に入らない。それは、読者一人ひとりが実践を通して体得するものだからだ。
ただし、これは本書がゲームデザイン関連書籍によくある「オレ様理論」の寄せ集めである、という意味ではない。全体の章立てや論旨は、これまでGDC(註5)のゲーム教育サミットやSIGGRAPH(註6)などで蓄積されてきた議論や、ゲーム開発者の国際NPOである国際ゲーム開発者協会(IGDA)の教育SIGが作成・公開した「IGDAカリキュラムフレームワーク」の内容がベースになっている。そのうえで著者自身の経歴をもとにした数々の知見で補強されているのだ。関連する論文や参考文献のリストもたっぷりあり、本格的なゲーム研究の導入書としても使用できる。
つまり本書はアカデミックな知見と、著者のゲーム業界における知見が巧みにブレンドされた、他に類をみない複合的な内容になっているのだ。そのため、本書は数あるゲームデザイン関連書籍に比べて、はるかに読みやすい。ユーモアにあふれた語り口で、文体は優しく、さまざまな具体例に富んでいる。ゲームデザインについて学び始めた学生が読むのに、最適な一冊だと言えるだろう。
なるほど。
オレ理論集大成へのアンチテーゼなのか。
わかってきた気がする
(ここでブログは途切れている)